Interview
miibo導入インタビュー
CS部門の問い合わせ対応負担を大幅軽減し、そのノウハウを活かした新サービスを開発。CS業務に新たな息吹を吹き込むAIチャットボット活用
GMOペパボ株式会社
事業開発部 AXチーム 秦 智也 氏、小林 尚貴 氏
Point
導入の動機
・カスタマーサポート部門の業務効率化、生産性向上 ・サイレントカスタマー対策 ・RAG環境を構築でき、非エンジニアでも対応できるmiiboが条件に合致
活用方法
・各サービスの問い合わせに対応するAIチャットボットを開発 ・顧客向けに新サービス『GMO即レスAI』を開発・リリース
導入効果
・有人対応を50%削減 ・リスキリングの活発化 ・CS人材が新たな収益を生み出すことに成功
導入したきっかけ
カスタマーサポートのリソース確保とサイレントカスタマー対策が課題に
GMOペパボは、企業理念「もっとおもしろくできる」とミッション「人類のアウトプットを増やす」のもと、ホスティング事業やEC支援事業など、さまざまなインターネット関連サービスを提供しています。サービスごとにCS担当チームがあり、主にメールとチャットで問い合わせを受け、一部は電話対応も行っていました。
問い合わせ対応にAIチャットボットを導入した背景には、カスタマーサポート(以下、CS)部門が抱えていた2つの課題がありました。
1つ目の課題は、問い合わせ対応以外の業務への時間を確保することです。人数を増やすことなく、新しい価値を生み出すための取り組みに挑戦するには、既存業務、特に業務全体の9割を占める問い合わせ対応の生産性をより高める必要がありました。
もう1つの課題は、お客様が問い合わせを行う際のハードルの高さです。問い合わせたいことがあっても行動に移さないお客様のことを「サイレントカスタマー」と言います。このようなサイレントカスタマーを放置すると、サービスからの離脱につながることが多いため、できる限り不明点を問い合わせていただける環境が求められていました。アンケート調査によると、問い合わせを妨げている理由として、「人とのコミュニケーションが苦手」「問い合わせまでの手間」などが挙げられました。そこで、AIチャットボットを導入することで、問い合わせのハードルを下げられるのではないかと考えました。
また、当社にはAIを積極的に活用しようという組織風土があり、現場でも新しい挑戦を求める声が高まっていたタイミングで、AIチャットボットの本格的な導入が始まりました。AIチャットボットに求めたのは、RAGの構築が簡単で、CS部門内で保守やチューニングが対応可能であることです。
さらに、GMOインターネットグループでは、AI人材を育てるための専門家による「GMO AIセミナー」が定期開催されており、CSメンバーがAIを理解していたことも後押しとなりました。

GMOペパボ株式会社 事業開発部 AXチーム リーダー 秦 智也 氏
活用方法
自社のCSノウハウとAI技術を掛け合わせたお問い合わせ対応AI導入支援サービス『GMO即レスAI』をリリース
CSメンバーが中心となり、AI活用ノウハウとCSノウハウを掛け合わせた新サービス『GMO即レスAI』が2024年3月にリリースされました。プロダクトの母体となっているmiiboはノーコードで簡単に構築できるため、質問に答えるだけのチャットボットは他社でも作成可能です。当社ではさらに一歩進み、回答精度を向上させるためのヒアリングをお客様に実施し、ニーズに応じたシナリオ分岐を行うことで、顧客体験の質を高めています。これらの取り組みには、当社のCS部門が持つノウハウが大きく活かされています。
私たちは自社サービスの一次対応をすべてAIチャットボット化するにあたり、リリースまでに1ヵ月、チューニングに約3ヵ月の期間を要しました。プロンプトの書き方や、正しい回答が行える会話の設計やその基礎となるKPI設計に、特に時間と労力をかけました。導入を検討されている企業はたくさんあると思いますが、AIチャットボットの導入にかかるこれらのリソースへの懸念から導入に踏み込めない企業は多いのではないかと思います。
多くの企業のCS部門においても同様の課題が存在すると考えたとき、AIチャットボット導入・運用のノウハウを提供することは、社会の生産性向上の一助になるのではないかと思いました。この考えが、自社サービス用の問い合わせ対応AIチャットボットを、顧客向けの新サービス『GMO即レスAI』へと昇華させるアイデアにつながったのです。

株式会社miibo 代表取締役 功刀雅士
導入効果
CS部門の問い合わせ対応負担を大幅削減し、守りから攻めに転じるリソースを確保
各サービスの問い合わせ対応については、サービスごとに差はあるものの、平均50%程度のコスト削減が実現しました。問い合わせをしてくださったお客様のうち70%はAIチャットボットを利用し、そこで解決できなかった問題のみ有人対応で解決する形に切り替えられています。ちなみに、大幅なコスト削減は、単に問い合わせ数が減った結果というわけではありません。問い合わせやすさが向上したことで、以前からの課題であったサイレントカスタマーからの問い合わせが増え、新たなニーズを発見することにつながりました。
全体として問い合わせ数は増えた一方、自動化によって有人対応の負担は大幅に軽減できているため、CS部門の問い合わせ対応時間の削減と、サイレントカスタマーからの新たなニーズの発見という2つの課題が解決できました。
この取り組みによって軽減されたリソースを活かし、社内では配置転換(リスキリング)が活発に行われています。これまで守りにリソースを割いていた人材のうち、すでに11名がディレクターをはじめとする攻めのポジションへと転向していて、新しいサービス開発などに着手しています。これは非常に大きな効果だと感じています。予想をはるかに上回る効果が出たため、当初打ち立てた削減時間などの目標数値を見直さなければならなくなったほどです。
また、あらたに事業展開した『GMO即レスAI』も非常に大きな反響をいただいています。トレンドとして注目されているAIですが、実際ここまで活用できるということに驚きの声を上げるお客様も多くいらっしゃいました。単純な問い合わせ対応というだけでなく、提案をするという新たなコミュニケーションとしてご活用されている企業様もいらっしゃいます。
何より、これまで守りであるサポートを行っていたCSメンバーが、これらのノウハウを活かすことで攻めのポジションへ転換し新たなサービスを生み出せたことは、大きな意義があることだったと感じています。

GMOペパボ株式会社 事業開発部 AXチーム 小林 尚貴氏
導入の工夫
質にフォーカスしたKPI設計と細かなチューニングによって高精度な回答を実現
工夫したのは、目標となる数値をどのように取るかです。CS部門では顧客満足度や生産性向上といった指標を数値化し、KPIを設計します。AIチャットボット上の顧客行動を数値として可視化したり、KPIを設計する上で重視したのは、“量と質”です。単純に問い合わせの量が減ってCSの負担が削減されても、顧客体験の質が担保されていないのであれば本末転倒ですよね。たとえば、AIチャットボットが使いづらいから問い合わせの量が減るというのは、私たちにとって最悪のシナリオです。
そこで、私たちはAIによる応答の質に着目し、どれだけ早く回答できたか、チャットボットからの離脱率はどれくらいか、ラリーは何回生じたかといったお客様の行動に関するデータを分析しました。また、単なる回答率ではなく、回答内容の精度、つまり正答率を見ていくことも重視しました。これらの数値を可視化できるように構築し、各サービスで等しく効果測定ができるように調整するには多くの時間がかかりましたが、質を担保するための細やかな分析と改善を重ねたことが、導入後の効果につながったと考えます。
また、母体となるmiiboはAIに細やかな行動指示を行うことができ、非常に自由度が高いと言えます。各サービスの担当者はAIに理想通りの動きをさせるために試行錯誤を重ねていましたが、この自由度の高さがあったからこそ、異なる業種や顧客属性のニーズに応じたAIチャットボットの構築ができたと感じています。
そのほかにも、読み込ませるデータの整理にも工夫が必要でした。各サービスのマニュアルをAIに読み込ませるためにフォーマットを調整したり、文章を修正したり、指示を出したりといったチューニングを繰り返しました。何度もCSメンバーに使ってもらい、そこで得たフィードバックをもとに改善を繰り返しながら、回答の精度を高めていきました。

今後の展望
問い合わせ対応を起点に縦横に展開していく構想。AIが当たり前のように使われる社会へ
問い合わせ対応に関しては、『GMO即レスAI』を軸としたマルチモーダル化を進めていきたいと考えています。CS部門は、お問い合わせ対応の他にもさまざまな業務を抱えています。『GMO即レスAI』がCS部門全体の業務を支援できるように開発・提供を進め、幅広くお客様の業務効率化をサポートできるサービスへと成長させていきたいです。
もうひとつの構想は、『GMO即レスAI』を起点として、お問い合わせ対応だけにとどまらない活用方法を広めていくことです。たとえば、ECサイトで誰かにプレゼントする花を買いたいというお客様がいた場合、その文脈に合った花言葉を持つ花をAIが提案し、そのままECサイトでその花を購入するといった購入体験ができるようになったら、面白いですよね。商談の中では、すでに各業態に合ったさまざまなアイデアが出てきており、活用の仕方によってさまざまな可能性があると期待しています。

2024年9月30日公開 ・ 文 宿木屋・写真 藤田 亜弓・編集 埜口
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