Interview
miibo導入インタビュー
ユーザーの潜在的な可能性を一緒に見つけるAI。マイナビの新規事業開発におけるmiiboの活用
株式会社マイナビ
新領域開発室 部長 井上 慶子 氏、吉田 竜裕 氏、山田 寛顕 氏
Point
導入の動機
・新規事業の立ち上げに向けて、早期に動かせるプロトタイプを開発する必要があった ・ビジネスサイドが主体となって開発・検証を回せる体制をつくりたかった ・柔軟に対話設計を構築し、仮説検証を高速に回す必要があった
活用方法
・シナリオやステート機能を活用して、対話の流れを設計 ・ユーザ接点から得たインサイトをプロンプトに落とし込み、継続的にチューニング ・対話ログをレポート/エクスポートで分析し、シナリオを改善するサイクルを運用
導入効果
・早期に具体的なイメージを可視化でき、新規事業コンテスト通過に寄与 ・少人数体制でも、モック作成から検証までを推進 ・新規事業立ち上げに向けた素早い仮説検証に貢献
株式会社マイナビの社内新規事業コンテスト「MOVE」から生まれたAIサービスにおいて、miiboを活用した事業検証が進められています。プロンプト設計の自由度と素早いプロトタイピングを実現するツールとしてmiiboを選定し開発をすすめる新領域開発室 部長 井上慶子氏、吉田 竜裕氏、プロダクト開発担当をしている 山田 寛顕氏に、その経緯と活用の工夫、今後の展望を伺いました。
全社コンテスト「MOVE」から事業化へ
マイナビのコンペティション型の新規事業提案制度「MOVE」は、2023年から開催されているマイナビの全社員が応募できる全社的な取り組みです。1人~3人で応募でき、複数回の審査を経て事業化が検討されます。
―「MOVE」に応募された経緯と、サービスの概要を教えてください。
井上氏:長年温めていたアイデアをこのコンテストで形にしました。本サービスは、AIキャラクターとの対話を通じて、ユーザーが自分の興味や関心、感情を言語化できるようにするものです。答えを教えるのではなく、本人の中にあるものを引き出すというコーチング的な設計が最大の特徴です。
吉田氏:MOVE応募時は井上と私の2名でスタートし、グランプリ通過後に新領域開発室へ異動しました。その後は、山田の所属する開発支援チームと連携しながら事業化に向けた取り組みを進めています。

株式会社マイナビ 新領域開発室 部長 井上慶子氏
―事業アイデアの背景にある課題意識を聞かせてください。
井上氏:自分自身のキャリア選択での経験が原点にあります。もっと多くの情報にアクセスできていたら、選択肢を広く知った上で判断できていたら、という思いが長くあって。そういった情報格差や選択機会の不平等を解消するために、誰もが自分の可能性を探索できるようなサービスを作りたいというのが、2017年頃から頭の中にあったアイデアです。
miiboを選んだ理由——仮説検証の速度と設計の自由度
―miiboを使い始めたきっかけを教えてください。
吉田氏:もともとAI活用に関心があり、miiboのセミナーに参加したことがきっかけです。コンテストの前から、当時担当していた領域でAIを組み込むイメージをつけるためにプロトタイプ作成に使っていました。プロンプトを入れるだけで基本的な動作が確認できますし、シナリオ機能もゼロから構築するより扱いやすい。検証しながら柔軟に調整できる自由度が、自分たちのやり方に合っていました。
井上氏:コンテストで提案する際にも、miiboを使えばある程度動くプロトタイプをすぐに見せられる。具体的なイメージを早期に可視化できたことは、審査を通過する上でも有効だったと思います。

株式会社マイナビ 新領域開発室 吉田 竜裕氏
―プロダクト開発担当の観点から、ツール選定についてお聞きします。
山田氏:新規事業の仮説検証では、素早くユーザーに届けることが重要です。スクラッチ開発はリードタイムが長い。本開発前のプロトタイプでの検証をする際に、miiboの仕様でサービスモデルのコア機能を開発せず検証できる点で評価しました。特にシナリオ機能のGUIの直感性が高く、エンジニア以外の方でも操作しやすい。今回のビジネスモデルと現在の体制に適したツールだと判断しています。
「インサイトを引き出すAI」の設計——キャラクターの思想とプロンプト設計
本サービスの中核にあるAIキャラクターは、ユーザーの話をよく聞き、潜在的なインサイトを言語化する手助けをする存在として設計されています。
―AIキャラクターの設計思想を教えてください。
井上氏:吉田と二人で議論しながら作りました。私たちが共通して大切にしているのが「Connecting The Dots」という価値観です。点を打ち続けていれば、いつかそれがつながる瞬間がある。その価値観をキャラクターに込めています。答えを教えるのではなく、ユーザーの中にあるものを引き出して、記録して、整理していく。その積み重ねが、自分の輪郭への気づきにつながっていく設計です。
―AIに引き出す役割を担わせるのは、技術的に難しい部分もあるのではないですか。
井上氏:そこが最も工夫が必要な部分です。AIはどうしても答えてしまおうとする方向に引っ張られます。本サービスの開発に向けて、コーチングのトレーニングを100時間以上受けて資格取得をしました。そのナレッジをプロンプトに落とし込めるように工夫しています。「キャラクターらしくない言葉を発しないように」「答えは本人の中にある」という設計を丁寧に調整しながら作っています。
山田氏:一般的なLLMにそのまま投げると、例えば、ユーザがやりたいことや将来の目標の話をしたときに選択肢を3つ出して「どれで進めますか?」や「〇〇をすると良いです」という返答になってしまう。このサービスでは「それはどういうことですか?」「なぜそう思うんですか?」と深掘りしていく。その会話の質の違いが、サービスの本質だと思っています。

株式会社マイナビ 新領域開発室 山田 寛顕氏
miiboとの開発プロセス——ログ活用と機能アップデートの速さ
―miiboを使う上で工夫している点はありますか。
吉田氏:ユーザー接点で得た一次情報と、ナレッジ、実運用データを組み合わせて改善サイクルを回している点が工夫です。ユーザー接点でのインタビューや観察は井上が中心となって進めており、そこで得られたインサイトや、実現したい世界観に近づくためのナレッジをプロンプトに反映しています。加えて、対話ログを分析し、実際の利用データも踏まえながら改善を重ねています。
―ツールやベンダーとしてのmiiboで、印象に残っている点はありますか。
吉田氏:要望を伝えてから機能に反映されるまでが速いことです。「こういう機能があれば」と相談した内容が、短いサイクルで実際のアップデートとして返ってくる。スタートアップならではのスピード感で、私たちの仮説検証のテンポにもよく合っていました。手が届かないところに置かれた要望、という感覚がほとんどありません。
山田氏:miiboのシナリオ機能は、自由対話に任せきりにするのではなく、対話の流れをコントロールしやすい点で評価しています。また、利用状況を見ながらGUI上で調整できるため、継続的なチューニングがしやすい点も利点です。

株式会社miibo 田中康亮
miiboへの要望と、今後のAI活用の展望
―miiboに対して期待することや要望があれば教えてください。
吉田氏:ログデータを活用して、定性的な会話のやりとりから定量的な評価を導き出せるような機能への期待があります。良い会話・そうでない会話をスコア化できると、サービスの価値をより具体的に伝えられるようになると思っています。
井上氏:サポート機能のさらなる強化と、キャラクター性の向上を期待しています。利用者が自律的に使いこなせるようになると、展開できるシーンが広がる。長期的には、物理的なロボットとの連携も視野に入れています。

―最後に、AI活用全般について今後の展望をお聞かせください。
山田氏:プロダクト開発における最適化とスピードアップは、AIの可能性が最も発揮される領域です。この分野は進化が速く、毎月のように新しい技術やサービスが登場します。だからこそ、特定のツールに固執せず、常に最新の動向をキャッチアップしながら、本当に効果の出る使い方を選び続けることが大切だと考えています。
吉田氏:AIの可能性は広がっていると感じていますが、AI活用を目的にするのではなく、UXを良くしたり、仮説検証のサイクルを速く回すための手段として活用したいと考えています。その中でも、プロダクトアウトになりすぎず、ユーザー起点で価値のあるプロダクトや事業をつくることを大事にしたいなと思います。
井上氏:サービスを使う時間が「やらなきゃいけないから」ではなく、「話したくて仕方ない」という体験になってほしい。その体験を作り続けることが、これからの私たちの目標です。

このサービスは現在も進化を続けています。答えを教えるのではなくユーザーのインサイトを引き出すというAIの使い方は、miiboとマイナビチームが組み合わさることで初めて実現したものです。
2026年7月28日公開 ・ 写真 藤田 亜弓・文/編集 埜口
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