Interview

miibo導入インタビュー

東急リバブル株式会社

問い合わせ前の「見えないお客様」から届く声――東急リバブルが描く、会話型AIによる新たな顧客接点

#アシスタントAI#非エンジニア
東急リバブル株式会社の導入事例

東急リバブル株式会社

マーケティング推進部 デジタルコミュニケーション課   課長 富島 健 氏、係長代理 相澤 力矢 氏

Point

導入の動機

・問い合わせ前の「見えないお客様」への課題対応 ・LLMの柔軟な選択と日本語での運用しやすいAIの選定

活用方法

・90人規模で2段階に分けて実施した徹底的なテスト体制 ・社内に蓄積された知見をナレッジ化し、不動産業界特有の制約にも対応 ・ステート機能で物件検索の文脈を維持し、条件を積み上げながら提案

導入効果

・チャット利用者からのコンバージョンが想定を上回る件数を達成 ・相続など、いきなり人には聞きにくいセンシティブな質問への対応 ・利用状況の分析による、ホームページ導線設計の改善

総合不動産流通業を展開する東急リバブル株式会社。物件や不動産情報を求めてホームページに訪れるものの、問い合わせ前に離脱してしまう「見えない顧客」に対し、新しい顧客体験を提供する不動産AIアドバイザー「Tellus Talk(テラストーク)」の提供を開始しました。サービスの開発から運用について、マーケティング推進部 デジタルコミュニケーション課 課長 富島健氏、係長代理 相澤力矢氏に、miibo代表取締役 功刀雅士が話を伺いました。

導入したきっかけ

「見えない顧客」への課題意識

富島氏:当社は総合不動産流通企業として、お客様の「売りたい」「買いたい」をつなぐ売買仲介を主軸に、賃貸仲介、不動産ソリューション(法人向け)、不動産開発・販売、新築販売受託、資産コンサルティングなど、幅広い事業を展開しております。お客様に対し、業界で唯一無二の東急リバブルにしかできない最善の提案をすることで、お客様満足を超えた感動のご提案を目指しています。

私たちデジタルコミュニケーション課は14人体制で、デジタルマーケティングの企画・運用を担当しており、顧客体験(CX)の向上についてさまざまな取り組みをしてきました。ただ、ホームページから実際に問い合わせという一歩を踏み出す前に離脱してしまう潜在顧客への対応が長年の課題でした。これが、会話型AIサービス『Tellus Talk』の開発を検討するきっかけとなりました。ちょうどそんな折に、パートナーの電通デジタルさんから、miiboを活用した新しいAIソリューションの提案をいただいたことが、プロジェクトの始動につながったのです。

マーケティング推進部 デジタルコミュニケーション課 課長 富島 健 氏

マーケティング推進部 デジタルコミュニケーション課 課長 富島 健 氏

LLMの柔軟性と日本語運用のしやすさが決め手

相澤氏:miibo選定の決め手となったのは、LLM(大規模言語モデル)の選択が柔軟にできる点でした。日進月歩で変わっていく技術に追随しやすい。それに、日本語で、私でも理解できる形でプロンプトを入れて制御・管理できる。管理画面を通じて、電通デジタルさんとのコミュニケーションもしやすかったんです。

また、当社デジタルコミュニケーション課のメンバーは営業経験者や文系出身者が中心です。そのため、高度なエンジニアリングの専門知識がなくともスムーズに運用できることは、ソリューションを選定するうえでの重要な判断材料となりました。

マーケティング推進部 デジタルコミュニケーション課 係長代理 相澤 力矢 氏

マーケティング推進部 デジタルコミュニケーション課 係長代理 相澤 力矢 氏

活用方法

90人規模、2段階の徹底検証

富島氏:導入にあたっては、手厚い検証体制を構築しました。1回目のテストでは、事務局メンバーや本社に在籍する別部門のスタッフなど約40人が参加して、多角的なフィードバックを収集しています。2回目では、電通デジタル様の協力も得て約50名程度のテスターを集め、より実際のお客様ニーズに近い目線で試験運用してもらい、臨場感ある視点を取り入れました。

ナレッジ化と不動産特有の制約への対応

相澤氏:一般的な質問にお答えすることは大前提ですが、それに加えて当社のサービスを適切にご紹介できるよう、独自のナレッジを組み込むなどの工夫を凝らしました。また新入社員向け育成資料やチャット対応オペレーター向けQ&Aなど、社内に蓄積された知見もナレッジ化して活用しています。

加えて、不動産業界特有の制約事項や専門表現も厳しくテストしました。物件による対応方法の違いなど、細かなシチュエーションを想定しながら検証を重ねました。

ステート機能による文脈維持

相澤氏:運用を推進する過程で、ステート機能の有用性を改めて認識しました。導入時にはそれほど重視していなかった機能なのですが、運用・改善を重ねる中での気づきでした。物件検索などで、会話のラリーを続けながら徐々に条件を積み上げることがあります。以前は、途中の会話履歴が抜けて希望と違う物件を紹介してしまうことがあったのですが、ステート機能で検索条件をストックし、過去の文脈を維持することで、提案のミスマッチを抑制できるようになりました。

導入効果

想定以上のコンバージョンを獲得

富島氏:チャット利用者からのコンバージョンは、当初想定を上回る件数を達成しています。Tellus Talkの利用数も徐々に増えていますし、質問に対してしっかりと回答ができている証だと考えています。

相澤氏:Tellus Talkの会話ログを確認していると印象的な質問内容もありました。『モルタル風のグレーの壁紙に合うカーテンの色を教えてください』という、インテリアコーディネーターに聞くような内容も含まれていました。このことで不動産情報だけでなく、契約後の生活を想定して質問するお客様の気持ちを知ることができましたし、それに対してTellus Talkも的確に対応できていました。

相手がAIだからこその「質問しやすさ」

相澤氏:「AIチャット」ならではの利点も発揮できていると思います。営業担当への問い合わせ前に確認しておきたいことがあったとしても、それが相続に関することやその他プライベートな事情にかかわることだと、いきなり他人には質問しづらいものです。それに対し、相手がAIであれば気兼ねすることなく質問できますし、フラットな視点で意見を得られます。AIチャットに求められるのは、こうした対応によって「良き相談相手」としてお客様に寄り添うことです。

ログから見えた想定外の顧客行動

富島氏:Tellus Talkの導入によって、「想定外の顧客導線」に気付けたというケースもあります。一例として、「物件を売りたい」というシンプルな発話がありました。私たちは、サイト内の目立つ位置に「売却査定ボタン」を配置していたので、当然お客様の目に留まっていると考えていました。しかし、実際にサイトを訪問されるお客様は必ずしも私たちの想定どおりには動いてくれません。「自社が最適だと考えていた導線設計」と「実際のお客様の認識」との間に乖離があったことを、再認識することができました。

今後の展望

富島氏:お客様にとっての体験価値の向上を大前提としつつ、今後は利用データの分析をさらに進めたいです。これを営業担当の接客品質の向上に活かし、それによってお客様への価値還元も加速するような好循環が生み出せたらいいですね。問い合わせ前の『見えないお客様』から届く声。私たちの挑戦はまだ始まったばかりですが、不動産業界における新たな顧客接点の可能性を信じて今後も精進してまいります。

相澤氏:現在、Tellus Talkは実需の売買仲介に関する質問のみに対応しています。当社は総合不動産流通企業として多彩な事業領域でサービスを提供しておりますので、他事業への展開を計画中です。Tellus Talkを通じて不動産に関するニーズを持ってサイトに訪問されるあらゆるお客様に対応できるようにしたいですね。

2026年2月10日公開 ・ 写真 藤田 亜弓・文/編集 埜口

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